関係機関による継続的な各種モニタリング調査の実施
屋久島・口永良部島BRの保全に対して、関係各行政機関及び研究者の実施するモニタリング調査などで、植生の実態や動物の生息数などを調査しています。
とくに核心地域では、世界遺産地域の管理主体で構成する世界遺産地域連絡会議で屋久島世界自然遺産地域モニタリング計画を掲げており、継続的な自然環境、利用状況に関するモニタリングを関係行政機関で連携して実施しています。
主として林野庁と環境省がモニタリングを担当していますが、国立大学や研究所などの研究者やNPOも含まれます。
撮影場所:林野庁 九州森林管理局管内
管理目標
1)天然スギに代表される特異な自然景観が維持されていること
2)植生の垂直分布に代表される貴重な生態系が維持されていること
3)観光客等による利用及び人為活動が世界遺産登録時の価値を損なっていないこと
以上を管理目標にして、それぞれの機関でモニタリング項目を定めて、実施・評価を行なっています。
また、屋久島・口永良部島BRの利用に関しては、屋久島町内への入り込み客数や縄文杉登山道及び一部の登山道の利用者数等を調査することによって、各地域への影響及び施策の効果を評価する基礎資料としています。
林野庁
林野庁では、平成11(1999)年から森林生態系モニタリング調査を毎年実施しているほか、ヤクタネゴヨウのモニタリング調査、増殖・復元対策、ヤクシカ対策、外来種対策、著名ヤクスギの保全、森林病害虫(マツノザイセンチュウ病)対策、来訪者・外部要請に伴う森林環境教育の実施、月刊広報紙の発行、ホームページ開設による普及啓発、屋久島世界遺産地域に関わる研究報告・文献収集、研究機関等への入林時の便宜供与(林道の鍵貸与、情報提供等)、外部研究機関からの協力要請にも応え、取り組んでいます。
環境省
環境省では、屋久島世界遺産センターを開設し、屋久島を訪れる利用者に対して、世界自然遺産や国立公園の自然や、自然を楽しむためのマナーや保護地域の歴史を伝えています。また、環境学習や研修などの受け入れも行われています。加えて、世界遺産センターは遺産地域に係る研究拠点として、多くの研究者が屋久島に訪れる際の調査拠点としての役割も備えています。
昭和58〜59(1983〜1984)年にかけて環境庁(当時)による「花山原生自然環境保全地域総合調査」が実施され、気象、地質、植物、動物など多くの分野の研究者が栗生に基地をおいて、大規模な調査がおこなわれました。この調査は花山原生自然環境保全地域の調査に加え、屋久島全体の総合調査であり、地質や気象データ、全島の植物や鳥類リスト、垂直分布帯の実態などが初めてとり纏められたものです。
調査成果
これらの調査成果は、毎年の報告書作成、屋久島世界遺産地域科学委員会への報告などに成果として活かされており、屋久島・口永良部島BRおよび屋久島世界遺産地域の管理、保全対策に反映されることとなっています。
管理機関が継続して実施するモニタリング項目
モニタリング項目 | 評価指数 | 実施主体 | 実施頻度 | ||||||
環境省 | 林野庁 | 鹿児島県 | 屋久島町 | その他 | |||||
1 | 気象データの測定 | 1 | 気温,温度,地温,土壌水分,降水量等 | ● | ● | ● | ● | 10分毎~毎時 | |
2 | 大気組成、水質測定 | 2 | 降下ばいじん量 | ● | 毎月 | ||||
3 | pH,DO,BOD,COD,SS,大腸菌群数 | ● | 4年毎 | ||||||
3 | 天然スギ林の現状把握 | 4 | 天然スギ林の面積 | ● | 10年毎 | ||||
4 | 天然スギ林の動態把握 | 5 | 天然スギ林の種組成及び階層構造 | ● | ● | 5~10年後 | |||
5 | 著名ヤクスギ等の巨樹・巨木の現状把握 | 6 | 著名ヤクスギである各個体の枝数、葉量 | ● | ● | 毎年 | |||
6 | その他の特異な自然景観資源の現状把握 | 7 | 特異な自然景観資源の現況 | ● | 毎年 | ||||
7 | 植生の垂直分布の動態調査 | 8 | 群集、種組成及び階層構造 | ● | ● | 5~10年毎 | |||
8 | ヤクシカの動態把握及び被害状況把握 | 9 | ヤクシカの個体数 | ● | ● | 1~5年 | |||
10 | ヤクシカの捕獲頭数 | ● | ● | ● | 毎年 | ||||
11 | ヤクシカによる植生被害及び回復状況 | ● | ● | ● | 1~5年毎 | ||||
9 | 希少種・固有種の分布状況の把握 | 12 | 林床部の希少種・固有種の分布・生育状況 | ● | 5年毎 | ||||
13 | ヤクタネゴヨウの分布・生育状況 | ● | 5年毎 | ||||||
10 | 外来種等による生態系への影響把握 | 14 | 外来植物アブラギリの分布状況 | ● | 毎年~5年毎 | ||||
11 | 高層湿原の動態把握 | 15 | 湿原の面積 | ● | 5年毎 | ||||
16 | 湿原の水深、土砂堆積深及び落ち葉だまりの分布面積 | ● | 5年毎 | ||||||
12 | 高層湿原植生の動態把握 | 17 | 湿原植生群落の分布、種組成 | ● | 5年毎 | ||||
13 | 利用状況の把握 | 18 | 屋久島入島者数 | ● | 毎日 | ||||
19 | 主要山岳部における登山者数 | ● | 毎日 | ||||||
20 | 自然休養林における施設利用者数 | ● | ● | 毎日 | |||||
21 | 携帯トイレ利用者数 | ● | 1~3年毎 | ||||||
22 | レクリエーション利用者の動向 | ● | 毎日 | ||||||
23 | レクリエーション利用や観光業の実態 | ● | 5~10年毎 | ||||||
14 | 利用による植生等への影響把握 | 24 | 登山道周辺の荒廃状況、植生変化 | ● | 1年毎・5年毎 | ||||
25 | 避難小屋トイレ周辺の水質 | ● | 3年毎 |
資料:屋久島世界遺産地域科学委員会