農林水産業
農業
屋久島の農業
屋久島は9割以上が山地で、耕地としての平地が少ないこともあり、温暖な気候を活かした果樹栽培が中心となっている。
大正13(1924)年からポンカンの栽培が始まり、昭和45(1970)年頃からさらに甘みの強いタンカンが導入され質・量ともに日本有数の生産地となっている。タンカンは平成19年に「かごしまブランド」として指定されている。また、馬鈴薯、実エンドウ、ヤマイモ、焼酎芋、茶、花卉の生産にも取り組んでいる。さらに、茶や果樹の有機栽培に取り組む農業者も増えており、人間中心の考えでなく自然生態系や豊かさを考慮した自然農法や持続的な自然との共生の知恵である山菜の食文化の維持普及なども取り組まれている。
また、これまで利用されていなかった資源や屋久島のイメージを活かした二次加工商品の生産にも取り組んでいる。他に、ショウガ科のガジュツを材料にした胃腸薬の製造工場があり全国に向けて販売されているほか、軟水で豊かな水を活かし、焼酎製造も盛んで島内外の消費者に好評を得ている。
さらに、農作物に被害を与える野生動物の対策や遊休農地の活用など地域の共同活動も取り組んでいる。
畜産部門では、町営の牧場が2カ所あるほか、小規模の畜産農家もおり、肉用牛の畜産が主に行われている。
口永良部島の農業
口永良部島では、焼酎用の甘藷やガジュツが小規模に生産されているほか、島内に自生する筍をはじめとした山菜の食文化も地域住民に根付いている。畜産部門では、町営牧場が1カ所あり、肉用牛の畜産が主に行われている。
林業
林業は、移行地域に存在する育成期から利用期に移行しつつある人工林の利用に向け、間伐推進や造林事業の実施、森林組合等林業事業体の経営基盤強化や治山林道事業推進を図っている。特に、平成23年度には、民国連携の下で屋久島森林管理署、屋久島町、(社)鹿児島県森林整備公社、屋久島森林組合から構成された屋久島地域森林整備推進協定が締結され、これに基づき、屋久島島内で民有林と国有林の人工林が集中している3区域を施業団地として設定し、民国連携した基幹林道や専用林道の整備を通じて、協定に基づいた効率的森林施業を行うこととしている。
これにより、施業団地内の人工林資源の高効率な森林施業が行われるようになり、雇用の確保と併せて島内林業事業体の育成と、生産から搬出・販売までも通した持続可能な資源の利用と森林経営の好循環をもたらすこととなり、その結果、地域の林業振興、地域振興、経済発展に繋がることとなる。これは、移行地域における持続可能な自然資源の循環的活用を実現するものである。
また、屋久島では樹齢1,000年以上のスギをヤクスギと呼んでおり、年輪が緻密で樹脂分を多く含んでいることが特徴である。現在ヤクスギは、生木伐採しておらず、江戸時代に伐採利用された後、または平木に適さなかったため、林地に残された倒木など(通称:土埋木)をテーブルなどの家具類、花瓶、皿などの小物類のヤクスギ工芸品の材料として活用している。土埋木は、希少で限りある資源であるため、地場産業の維持の面からも関係者が連携し計画的に活用している。
水産業
屋久島近海は黒潮の影響により海水温が高く、魚種の多い海域として知られ、古くから生活の糧を得るため利用されてきた。
現在の漁業は、サバ漁とトビウオ漁が中心となっている。サバ漁は一湊漁港を中心に一本釣りによる漁が行われている。サバは照葉樹で燻して作られるさば節に加工され、蕎麦の出汁の材料として関東方面に出荷されている。また鮮度を保つために釣ってすぐに首を折って締めた首折れサバは刺身用として地域内の需要も高い。トビウオ漁は安房港で盛んに行われ、一夜干し、ミンチの水産加工品の材料となっている。
口永良部島近海はイセエビの漁場となっているほか、豊富な漁場となっているため、屋久島の住民も船で釣りに行くほどの釣りの名所にもなっている。